こどものころのゆめ
たかはしけんたは銀行で働いている会社員です。毎日スーツを着て、忙しく働いていました。仕事は安定していましたが、心のどこかで何か足りないと感じていました。
ある日、引っ越しの準備をしているときに、古い箱を見つけました。その中には子供のころに使っていたスケッチブックが入っていました。
ページを開くと、動物や建物、未来の街の絵がたくさんありました。線は少し雑でしたが、とても自由な絵でした。「こんな絵を描いていたのか」とけんたは驚きました。
その中には「将来のゆめ」と書かれたページもありました。そこには大きなビルや橋をデザインする人になりたいと書かれていました。
けんたはしばらくそのページを見つめました。「昔は絵を描くのが好きだったな」と思いました。でも大学に入ってからは、安定した仕事を選び、銀行で働くようになりました。
その夜、けんたは久しぶりに鉛筆を手に取りました。白い紙に線を引くと、少しだけ手が動きにくく感じましたが、だんだん思い出してきました。
気づくと、昔のように建物の絵を描いていました。夜遅くまで集中して描き続けました。
翌日も、仕事から帰るとスケッチブックを開きました。少しずつ、毎日の習慣になっていきました。
職場では変わらず働いていましたが、家に帰ると別の世界がありました。そこでは自由に線を引き、自分の考えを形にすることができました。
ある日、同僚に「最近、楽しそうですね」と言われました。けんたは少し笑って「昔の趣味を思い出したんです」と答えました。
その後、けんたは小さな展示会に自分の絵を出すことにしました。自信はあまりありませんでしたが、「昔の自分に戻ってみたい」と思いました。
展示会の日、いくつかの人が絵を見て「いいですね」と言ってくれました。その言葉は、思っていたよりもずっと心に残りました。
帰り道、けんたは空を見上げました。「夢は終わったわけじゃない。ただ、少し休んでいただけかもしれない」と思いました。
それからけんたは、仕事と絵の両方を大切にするようになりました。忙しい毎日の中でも、自分の時間を少しずつ取り戻していきました。
子供のころの夢は、消えたのではなく、静かに待っていただけでした。