海辺のバス停
春休みに、一人で旅行していた井上みさきは、小さな海辺の町を訪れました。
ところが、帰りのバスを待っているあいだに財布をなくしてしまったことに気づきました。
駅にも店にも電話しましたが、見つかりませんでした。みさきは青い顔になり、「どうしよう」と何度もつぶやきました。
すると、近くのベンチに座っていた女性が、「大丈夫ですか」と声をかけてくれました。
事情を説明すると、その女性は「今日はうちに泊まりなさい」と言いました。
もちろん、みさきは最初断りました。しかし、その女性は「困ったときはお互いさまだから」と笑いました。
女性の家では、温かい魚料理をごちそうになりました。食事をしながら、女性は若いころ、自分も旅行先で知らない人に助けられたことがあると話してくれました。
翌朝、警察から財布が見つかったという連絡が入りました。
みさきは何度もお礼を言いましたが、女性は「今度はあなたがだれかを助けてあげればいいのよ」と言いました。
東京へ戻るバスの窓から海を見ながら、みさきはその言葉を静かに思い返していました。