あらしの夜

台風たいふうが近づいている夜、小さなラーメン屋やの店長てんちょうの健太けんたは、一人で店を片付かたづけていました。

天気てんき予報よほうによると、今夜は風かぜがとても強つよくなるそうです。だから健太は、早く店を閉しめたかったのです。

ところが、風かぜが急きゅうに強つよくなって、店の戸とがひとりでに開あきました。「だれも開あけていないのに、開あいてしまった」と健太は困こまりました。あわてて戸とを閉しめたら、今度こんどは窓まどのガラスが音おとを立たてて割われました。

「ああ、ガラスが割われているので、危あぶない」と言いながら、健太は電気でんきをつけました。ところが、台風たいふうのせいで電気でんきが消きえてしまいました。

暗くらい店内てんないで、健太は棚たなにぶつかって、皿さらを落おとしてしまいました。皿さらは床ゆかに落おちて、全部ぜんぶ割わってしまいました。さらに、机つくえの上うえの水みずもこぼし、大事だいじな書類しょるいをぬらしてしまいました。

「今日きょうは本当ほんとうについていないので、もう帰かえりたい」と健太は思おもいました。

その時とき、戸とが開あいて、近所きんじょの田中たなかさんが入はいってきました。雨あめで服ふくがぬれていて、手てにはかさかさを持もっていました。

「大丈夫だいじょうぶ?外そとは木きが倒たおれているし、信号しんごうも消きえているよ」と田中たなかさんが言いいました。「駅前えきまえのビルの看板かんばんも落おちたそうですよ」

田中たなかさんは店内てんないを見みて、「電気でんきが消きえているし、皿さらも割われているね。大変たいへんだったね」と心配しんぱいそうに言いいました。

二人ふたりは力ちからを合あわせて、割われたガラスを集あつめて片付かたづけました。こぼれた水みずもふいて、倒たおれていたいすいすも元もとに戻もどしました。

外そとでは台風たいふうが過すぎて、風かぜが止やまりかけていました。田中たなかさんが「風かぜが止やんだら、一緒いっしょにラーメンを食たべない?」と言いいました。

健太は笑わらって、消けえていた電気でんきの代かわりに、ろうそくに火ひをつけました。店みせの中なかが明あかるくなって、二人ふたりの顔かおが見みえました。

「台風たいふうの夜よるに食たべるラーメンは、特別とくべつにおいしいそうですよ」と健太が言いうと、田中たなかさんも声こえを出だして笑わらいました。